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VSOP-2の概要:地上関係

人的資源・コミュニティ

VSOP計画では、地球規模の観測・運用が求められるために、国内外での協力体制が不可欠でした。
宇宙科学研究所および国立天文台を中心として、通信総合研究所、法政大学、鹿児島大、茨城大、東京大学、東京理科大などの研究グループと一緒に、開発・立ち上げ・運用を行ってきました。
具体的には、宇宙研にVSOPグループ、天文台にVSOP室が立ち上がり、衛星、地上リンク局(臼田10m)、VLBI観測局(主に、臼田64m、鹿島34m)、および国立天文台の相関局の運用を行ってきました。さらに、軌道データによる軌道決定も宇宙研にて行われています。
こういったVSOP計画での経験は、その後の国内におけるVLBI研究に大きな影響を及ぼしました。

またVSOP計画においては、国際的に米国を中心とした協力体制が取られました。
他、カナダ、豪州を中心とした南半球VLBI観測局、欧州VLBI ネットワーク(EVN) など、14ヵ国、30局のVLBI望遠鏡が計画に参加しました。
このように国際的な枠組みが作られたことで、難しいと思われたVSOP運用が成功したのです。
VSOP-2計画についても、これらのグループを中心として議論を行っています。

VSOP計画によって蓄積・発展したのは技術面だけではありません。人的資源やコミュニティにおいても、それらがVSOP-2計画に還元され、大きな力となることが期待されています。

  1. 国内のVLBI研究と協力体制
    測地VLBIの研究

    1993年から2001年まで、通信総合研究所において首都圏地殻変動観測計画(キーストーン プロジェクト、KSP)が実施されました。
    この計画ではVLBIを利用した観測も行われましたが、中でも注目すべき点として、観測結果が極めて迅速に処理・解析されたことがあげられます。これはNTTとの共同研究によって超高速ATMネットワークを利用した実時間データ伝送・実時間相関処理に成功したためで、世界的にも極めて先進的で独創的な成果でした。

    2000年代の大型天文VLBI計画:VERA

    VERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry)とは、高精度のVLBI観測によって、銀河系の3次元地図を作成するというプロジェクトです。
    VERAはVSOP-2における国内地上観測局となることも期待されています。

    測月学への展開

    測月学とは、地球上の測地学(地球の形や重力、その変動を研究する学問)を月に応用したものです。月の内部構造や成因を明らかにすることなどを目標としています。

    宇宙飛翔体観測

    2001年から、VLBIを使った新たな研究として、宇宙飛翔体の精密位置決定観測が開始されました。
    これは火星探査機「のぞみ」の位置決定をVLBIによって行ったことが発端となっています。「のぞみ」の観測は2002 年から2003年にかけて30回以上も行われて次々と成功し、最終的には地球スイングバイにいたる軌道決定を実現しました。
    この成果をもとに、現在では「はやぶさ」の軌道決定を行なう研究が進められています。

    大学へのVLBIコミュニティの展開

    通信総合研究所や株式会社KDDIで使用されていたアンテナが、複数の大学に譲渡・移設されたことをきっかけに、天文VLBIの研究グループが次々と形成されました。観測施設を持たなくても、VSOP の観測データを用いた理論的な研究を進めるグループも増えています。
    これらの観測局や研究グループは、VSOP-2への寄与のみならず、人材の育成を含めて将来の天文VLBI研究を推進する重要な拠点となることが予想されます。

    ネットワークを利用したVLBIの研究

    データをネットワークで伝送し、実時間で処理することによって観測感度を向上させる事が可能になります。

    GALAXY
     国立天文台・通信総合研究所・宇宙科学研究所・NTTは、1996 年より関東近辺の大型アンテナを高速データ通信ネットワークで結合し、世界最高感度・実時間VLBI観測に成功しています。

    スーパーサイネット計画(VONUS)
     この方式の観測ネットワークは、国立情報学研究所の推進でさらに発展し、広帯域・高感度天文および測地VLBIの実験観測が行われています。

    一方で、PCを観測装置とした比較的低速度 (256Mbps) なVLBI観測を行う新システムの研究も行われています。この方式ではデータ取得、伝送、処理まで全てPCで行うため、IP伝送方式への適合性が高く、遠隔制御による無人観測なども実施されています。

  2. 国際的な協力機関、研究所

    VSOPでは、国際的にも各国の代表者からなるグループが立ち上がりました。
    VLBI関係者で構成されるVISC (VSOP International Science Council) がVSOPの方針について、電波天文観測所から構成されるGVWG (Global VLBI Working Group) が各地上望遠鏡の参加方法について、それぞれ議論を行いました。

    また、これらの国際的な枠組みの中、NASA/JPLが計画立案、軌道決定、DSN 3局にKuリンク局を建設。NRAO(米国国立電波天文台)が、リンク局、相関局、および地上望遠鏡、データ処理ソフトでの協力を行いました。さらに、カナダDRAOの相関局および、トロント大がVLBI記録装置を提供。他、豪州のCSIROを中心とした南半球VLBI観測局、欧州VLBIネットワークをはじめとして、14ヵ国、30局のVLBI望遠鏡がVSOP計画に参加しました。

    VSOP-2でもVSOPと同様の協力体制において計画を遂行する方向で、議論を行っています。