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VSOP-2の概要

ミッションのデザイン

上で述べたような科学的目的を遂行するために、VSOP-2で必要なASTRO-G衛星のパラメータ等と、そこから導き出される衛星の仕様を示します。ASTRO-G衛星の仕様一覧は別表に示します。


要求される性能

  1. 分解能

    VSOP-2は、世界最高の分解能をめざすミッションです。イメージングの最高分解能(合成 ビームサイズ) として、40マイクロ秒角を切る観測を行います。これは現在使用されているもっとも分解能が高い観測装置の、約2倍以上になります。(下表参照)
    定常的に高分解能を得るためには、できるだけ衛星の高度を高くする必要があります。しかしあまり高度を高くするとイメージング性能が落ちるため、その点の考慮が必要です。

    最長基線におけるフリンジ間隔の比較 (単位ミリ秒角)

      5 GHz 8 GHz 22 GHz 43 GHz
    VERA - 3.403 1.237 0.633
    VLBA 1.436 0.898 0.326 0.167
    VSOP 0.355 - 0.081 -
    VSOP-2 - 0.205 0.075 0.038


  2. イメージング性能

    VSOP-2では、世界最高性能の分解能を駆使してターゲット天体の画像を得ることが目的なので、高い分解能とともに、できるだけ質のよい画像を作成する必要があります。その性能は主に、(u,v)分布(≒観測できた空間周波数成分の分布)で評価されます。
    分布の広がりが大きいほど分解能は高まりますが、画質は落ちる傾向にあります。分布は衛星の軌道や位置によって変わるため、観測時には、目的や天体の構造によって最適な分布が得られるよう考慮します。


    右図:(u,v)分布とその合成ビーム

    下図:VSOP(上)と地上VLBI網(下)による
    イメージの比較 (天体:1928+738)
    VSOPと地上VLBI網によるイメージの比較
    クリックすると拡大画像が見られます

      (u,v)分布とその合成ビーム

  3. 感度

    ASTRO-G衛星-地上望遠鏡間の基線に関する感度は、得られる科学的成果を大きく左右します。この基線の感度がより高ければ、より多くの天体を観測できます。
    基線感度は積分時間を増やすことにより向上できますが、地上望遠鏡側の大気による位相変動が積分時間を制限してしまいます。そのため位相補償という手法を用いて補正し、さらに感度の向上を図ります。

  4. 偏波観測性能

    VSOPでは、衛星「はるか」側の偏波が左旋(LHCP) のみでした。そのため偏波成分での十分な(u,v) 分布が得られず、通常の偏波観測と比較して品質がおち、分解能も低下していました。
    VSOP-2では、各帯域について、、右旋 (RHCP)、左旋(LHCP)用の2周波の受信機を搭載して、高解像・高品質の偏波画像の取得を目指します。これにより、スペクトル線観測における感度の向上も図れます。

  5. 分光性能

    観測装置としての分光性能は相関器によって決まり、衛星の性能には直接影響しません。VLBI観測において分光には、1) 遅延残差の導出。2) スペクトル線観測、の2つの目的があります。
    VSOP-2 では、観測対象を考えると最小速度分解能して 0.05 km/s 程度の分解能が要求されます。現存する相関器の能力と計算機の能力の発展を見込めば、この程度は実現可能です。

  6. 位相補償性能

    VLBI観測で、比較的強度の強い基準天体と観測天体の2つの天体の観測を行い、 基準天体の信号を基準にして観測天体の信号を補正する手法を、位相補償観測といいます。

    この観測方法により、地球の大気成分をはじめとするいろいろな誤差が取り除けます。また、基準天体が位置の基準になるために、強度の弱い天体の観測や、メーザ天体の動きを追うのに威力を発揮します。
    この観測方法を実現するためには、短時間(1分以内)に3度以内にある2つの天体を観測することができる機能や、衛星の位置の高精度(数センチメートル程度)決定が必要になります。



軌道

  1. 遠地点高度

    遠地点高度が高いほど、得られる天体の分解能は高くなります。また、軌道周期が長くなって、必要なトラッキング局の数が減る等の利点があります。一方で、同じロケットの性能で打ち上げられる衛星の質量が小さくなり、イメージング性能が劣化するという問題もあります。
    遠地点高度がイメージング性能にどの程度影響するかを、イメージングシミュレーションにより検証しました。その結果、一般的な観測において、25,000?30,000kmの遠地点高度が最適であることがわかりました。
    したがって衛星の重量も考慮に入れ、遠地点高度 25,000kmを提案しました。

  2. 近地点高度

    VSOPでの近地点高度は、目標1,000kmに対して560kmで運用しました。近地点高度が低い場合、燃料の節約、衛星の軽量化、さらに観測にとって有利な点もあります。
    しかしVSOP-2の場合はより高精度の軌道決定が要求されており、不確定要素(大気抵抗の影響など)を増やさないためにも、1,000kmの近地点高度が必要です。

  3. 軌道傾斜角

    軌道傾斜角については、ロケットの射場のある場所での緯度と等しい場合が、衛星の重量を最も増やすことが出来ます。内之浦から打ち上げを行う場合、理想の軌道傾斜角は31度になります。